病棟とは違う訪問看護のエンゼルケア

訪問看護におけるケア

訪問看護におけるケア

訪問看護におけるエンゼルケアの処置内容は、病院で行うものとそこまで変わりません。しかし、どちらも携わった看護師からすると少し異なる点があるようです。細かい違いについて、看護師の実体験を交えながら紹介していきます。


時間の流れがゆっくりしている

時間の流れがゆっくりしている

まず、訪問看護のエンゼルケアは「病院で行うエンゼルケアよりも時間の流れがゆっくりしている」ようです。とある看護師によると、病棟勤務の時はエンゼルケアに故人のご家族が立ち会わないことも少なくなかったそうです。しかし、訪問看護に携わるようになってからは、ほとんどの場合ご家族が立ち会うようになりました。故人についての思い出話などを交えながら、穏やかな雰囲気の中でエンゼルケアを行う機会が多いそうです。そういった時間は悲しみを抱えるご家族へのグリーフケアにもなるため、遺された方々へ寄り添ったケアが可能です。

故人やご家族の希望を尊重したケアが可能

故人やご家族の希望を尊重したケアが可能

訪問看護におけるエンゼルケアは、病院で行うエンゼルケアよりも「ご遺族の意向を尊重したケアができる」傾向にあります。着替える服や化粧など、故人の生前の姿を尊重したエンゼルケアが可能です。例えば、女性の方が亡くなられた場合にはご本人が使用していたメイク道具をそのまま使用することができます。服装についても、病院だと入院時に持ってきた服の中から選んでもらうことになりますが、在宅なら家にある服の中から自由に選べます。男性であればワイシャツやスラックスなどある程度かっちりした服装も可能です。
とある看護師は、亡くなる前にご本人から「最後はお気に入りの着物を着たい」と頼まれたそうです。担当のケアマネジャーに確認し、最後に着たい着物を決めました。ご家族が着付けをできる方だったので、亡くなった後に一緒に着物を着せてあげることができたそうです。

ご家族への声がけがより重要となる

ご家族への声がけがより重要となる

基本的に訪問看護はご本人の希望を尊重した療養生活をサポートしていくものです。そのため、看護師がリードして環境調整などを行っていく機会が多いのですが、これはエンゼルケアも同様です。「遺体に触れてはいけない」と思い込んでいるご家族も多いため、エンゼルケアの際には「最後の時間となりますので、ご一緒にいかがでしょう?」と促す必要があります。また、医師の死亡診断や遺体の安置、葬儀会社の手配などその後の処置に対して不安を抱える方も少なくありません。そういった不安を抱えるご家族に対して声がけをするのも看護師の大切な仕事です。

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    訪問看護で行うエンゼルケアの処置内容は病院とほとんど変わりませんが、時間の感じ方やご家族への対応が若干異なります。これまで故人を必死に支えてきたご家族からすれば、すぐに死を受け入れるのは難しいものです。そのため、ご家族へのケアが重視されます。

  • 種類や費用について

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    エンゼルケアは病院で行うもの以外にも、葬儀社が行うものもあります。病院で行うエンゼルケアは医療行為としての側面があるため、看護師などの専門的な知識を持ったスタッフが行います。また、病院と葬儀社では費用も異なります。葬儀社の方が費用相場は高いようです。