エンゼルケアの持つ意義とは

エンゼルケアの持つ意義とは

エンゼルケアの持つ意義をあらためて確認しておきましょう。昔とは異なり、病院などの施設で死を迎える方が多くなったことから、近年はエンゼルケアが重要視されるようになってきました。


今の時代だからこそ求められている

今の時代だからこそ求められている

経済が発展し医療技術が発達したことから、病気を抱える人の多くは自宅だけでなく病院や介護施設などで治療を行えるようになりました。一方で少子高齢化や核家族化が進み、社会全体でコミュニティの希薄化が高まっています。そのような中で医療が死に関わる意味とは、現代人が死に向き合い、死を受け入れられる環境を整えることです。「死後の関わり」ともいえるエンゼルケアは、現代社会において大きな意味を持ちます。

死と向き合うために

死と向き合うために

お葬式などをはじめとした死を慎む行為は、亡くなった方に対する遺された方々の思いから行われています。エンゼルケアは亡くなった患者さんとそのご家族に対して行われる行為ですが、より意識すべきなのは遺された側に寄り添う姿勢です。哲学者のジャンケレヴィッチは「死の哲学は身近にいる人の死を契機としてなされる」と説いています。死を本当の意味で学ぶためには、大切な存在を失うことでしか実感できないということです。身近な人が亡くなった際は、当然ながら大きな悲しみや喪失感が生まれます。しかし、それが死生観を養うきっかけにもなり、自分の人生やいずれ訪れる死に対して目を向けることができるのです。
大切な人を失った経験は、その人が亡くなった後も心の中に残り続けます。人の死を受け入れるためにはある程度の時間や周囲のサポートを必要としますが、亡くなった直後の時間の過ごし方も重要な意味を持ちます。エンゼルケアは、大切な人が亡くなった直後のご遺族と接します。絶望的な心理状態に陥っている方も少なくないため、そこに向き合うのは簡単なことではありませんが、生から死へと移行した直後でまだ血色や体温が残っている身体があり、その状態を直接見て、触れて、感じることができる貴重な機会でもあります。その際に、スムーズに死と向き合える環境を整えることが、エンゼルケアを行う上で最も重視すべき点です。

まとめ

まとめ

現代に生きる人々が本当の意味で死と向き合い、死生観を養う場を整えることがエンゼルケアの意義です。そのためには、大切な人を失ったご遺族に寄り添い、ご遺体とゆっくり向き合える状況を作り出さなければなりません。生前に関わっていた医師や看護師もご遺族と同様に喪失感を感じています。喪失を共有し、人の死という重大なプロセスを受け入れるためにもエンゼルケアは必要なのです。

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