介護施設などで実施する場合

介護施設などで実施する場合

介護施設で亡くなった方に対するエンゼルケアのポイントを紹介します。社会の高齢化に伴い、看護師の活躍の場は医療機関だけではなくなりました。介護に携わる看護師はここで紹介する内容を押さえておきましょう。


スキンケアが重要

スキンケアが重要

人は亡くなった後、自分自身の身体をコントロールすることができません。そして、時間が経つにつれて様々な変化が起こります。その中で重要なのが、乾燥と腐敗への対策です。特に介護施設においては乾燥対策が大切です。
まず覚えておくべきなのは、「ご遺体が変化した後は元には戻らない」ということです。変化が起こってからでは遅いため、先回りして必要なケアを施さなければなりません。エンゼルケアと聞くと外見を整えるイメージが強いかもしれませんが、施設ではまず全身のスキンケアを行う必要があります。高齢者は身体の水分量が減少しており、死期が近づくにつれて食事や水分摂取量が低下します。そのため、亡くなった直後はかなりの脱水状態である可能性が高いです。
身体を清拭することで皮膚表面の皮脂膜がなくなり、急激に乾燥していきます。そのため、皮脂膜を人工的に作らなければなりません。化粧水は水分ベースのものではなく、油分ベースのものを用います。特に、外気に触れている部分を重点的にケアしましょう。その中でも顔は乾燥の度合いが高いので、入念なケアが必要です。唇はすぐに薄くつぶれてしまうため、油分の多いリップクリームやワセリンでケアしてください。
素早く行わなければならないためついつい力が入りがちになりますが、肌は脆くなっているので優しく拭きましょう。また、扇風機やエアコンの風が直接当たらないように注意してください。

固定のために縛らない

固定のために縛らない

ご遺体を固定のために縛ることは絶対にしないでください。手首を縛ると、重力の影響で下に移動するはずの水分が一定の場所に集中してしまい、浮腫が起こります。また、皮膚トラブルを招く原因にもなります。それと同様に、閉口のために顔を縛るのもいけません。枕を高くして顎の下にタオルを入れることで自然と閉口します。
なお、胸の上で手を組むのは必ず必要な行為ではありません。ご家族の要望があれば行うくらいでいいでしょう。その際は肘の上にタオルを置いて高くすれば手を組みやすくなります。

まとめ

まとめ

綺麗な外見に整えたいのは当然のことですが、死後のスキンケアが不十分だと上手くいきません。スキンケアが不十分なエンゼルケアはご遺体を傷つけてしまいます。一方的なケアにならないように、まずは必要な処置を施しましょう。

注目されている記事

  • 世界のエンゼルケア事情

    世界のエンゼルケア事情

    他の国は日本ほど積極的にエンゼルケアを行っていません。死に対する考え方の違いや法律的な理由から、亡くなった患者さんに看護師が触れられる機会が少ないのです。日本でも宗教的な理由からエンゼルケアを断られることはありますが、それでも世界トップレベルの内容です。

  • 訪問看護におけるケア

    訪問看護におけるケア

    訪問看護で行うエンゼルケアの処置内容は病院とほとんど変わりませんが、時間の感じ方やご家族への対応が若干異なります。これまで故人を必死に支えてきたご家族からすれば、すぐに死を受け入れるのは難しいものです。そのため、ご家族へのケアが重視されます。

  • 種類や費用について

    種類や費用について

    エンゼルケアは病院で行うもの以外にも、葬儀社が行うものもあります。病院で行うエンゼルケアは医療行為としての側面があるため、看護師などの専門的な知識を持ったスタッフが行います。また、病院と葬儀社では費用も異なります。葬儀社の方が費用相場は高いようです。